乳脂肪の甘やかな香りや滋味、豊かなコクなどが持ち味のバター。料理に独特の芳醇な香ばしさとまろやかなコクを添えるバターは、家庭でも、レストランや食品工場でも、必要不可欠な食材です。
では、そもそもバターとは何でしょう? 乳製品であることは知られていますが、どのように作られ、定義されているのでしょうか?
厚生労働省によれば、バターとは「生乳、牛乳又は特別牛乳から得られた脂肪粒を練圧したもの」。なんだか難しそうな定義ですが、手作りバターの手順を知ると、想像しやすくなります。
手作りバターの作り方は簡単。まず、冷やした生クリームをペットボトルに入れて蓋をし、シャカシャカと激しく振ります。生クリームはやがて粒状のかたまりと白い液体(バターミルク)に分かれます。この粒が、バター粒、別名「脂肪粒」。乳脂肪分、ビタミンAのほか、微量な栄養素(たんぱく質、ミネラルなど)が含まれています。粒を集め「練圧する」、つまり、かたまりになるまで練り上げるとバターができます。ちなみに、100gのバターを作るためには、2L強の生乳が必要となります。また、バターは乳牛の乳でできるものだけではありません。世界には、水牛や羊、山羊、ヤクなどの乳から作られるバターもあります。
日本国内で流通するバターは、さらに「乳脂肪分80.0%以上、水分17.0%以下」という規格を満たし、パッケージの裏に「種類別 バター」と表示されています。
さて、バターには、「甘性バター」と「発酵バター」の2種類があります。国内で製造・流通するバターのほとんどは「甘性バター」に分類されます。甘性バターは、またの名を非発酵バター。発酵バターに比べて酸味や香りが少ないため、甘みを感じやすいとされています。
まず、一般に「有塩バター」といわれているのは、製造工程で塩分を添加した「加塩バター」です。塩分を加えることで保存性を高められるほか、塩味をつけるのにも役立ちます。よつ葉乳業の商品では約1.6%(バター100gあたり1.6g)の塩分が含まれており、ポンドバター(加塩)やよつ葉バター(加塩)をはじめ、用途に応じてさまざまな容量・容器形態を取り揃えています。
一方、一般に「無塩バター」といわれているのは、製造工程で塩分を添加しない「食塩不使用のバター」。バターはそもそも原料の生乳に微量の塩分が含まれているため、本来、「無塩」とはいえません。人為的に塩分を使わない、すなわち「食塩不使用」と表記する決まりです。よつ葉乳業の商品では、ポンドバター(食塩不使用)やよつ葉バター(食塩不使用)がこちらにあたります。
有塩バター「バター(加塩)」と無塩バター「バター(食塩不使用)」では、有塩バターが主に料理全般、無塩バターは主に製パン・製菓用に使われます。有塩バターは料理に塩味をつけられますが、なぜパンやお菓子作りには無塩バターなのでしょう?
その主な理由は、塩分に小麦粉の粘り気(グルテン)を強める作用があるため。小麦粉の粘り気が強くなりすぎると、パン生地の場合はふっくら感、パイ・焼き菓子ならサクサク感が出にくくなります。そこで、製パン・製菓用では微量な塩分の調整が必要とされるため、塩分が必要な場合は食塩を使って調整します。バターでお料理に味付けをしたい時は有塩バター、塩分の繊細な調整が必要なパンやお菓子には無塩バターと覚えるとよさそうです。
ちなみに、有塩バターの代わりに無塩バターを使うときは、風味付けに必要な適量の塩を補えばOK。気軽に代用できます。一方、無塩バターの代わりに有塩バターを使う際は、塩味が強くなりすぎないように注意が必要です。「食塩」の分量を減らす、水分や食材の量を増やすなどレシピ全体の塩分量を調整しながらご利用ください。また、パンやお菓子を作る際に無塩バターを有塩バターで代用した場合、食感に影響が出ることがあります。できる限り、レシピ通りのバターを使うのがおすすめです。
よつ葉バター(加塩)とバター(食塩不使用)に加えて、よつ葉乳業の商品には家庭用のよつ葉バター(減塩)もあります。こちらはよつ葉バター(加塩)から塩分を40%以上カットし、塩分約0.5~0.9%(バター100gあたり0.5~0.9g)に抑えたもの。よつ葉バター(減塩)は、健康的な食生活への関心の高まりを受けて開発され、普段の食事で減塩を心がける方から支持されています。
ここまでは塩分量の異なるさまざまな「甘性バター」をご紹介してきましたが、最近は、輸入バターを中心に「発酵バター」も出回るようになってきました。よつ葉乳業でも、パンにおいしい発酵バターやよつ葉発酵バター〔ビン入り〕、北海道発酵バター[北海道限定発売]を販売しています。
「発酵バター」はもともと、ヨーロッパでは主流のバターです。発酵バターの「発酵」とは、ヨーグルトやぬか漬けなどと同じ乳酸菌発酵。乳酸菌発酵により、バター本来の甘い風味に、ヨーグルトのようなさわやかな酸味と特有の芳香が加わっています。クリームに乳酸菌を添加して発酵させる製法と、バターに乳酸菌を直接練り込んで発酵させる製法があります。よつ葉乳業のパンにおいしい発酵バターやよつ葉発酵バター〔ビン入り〕の場合は、原料のクリームに乳酸菌を加えて、「チャーン製法」という伝統製法で製造しています。
発酵バターも、使い方は普通の甘性バターと同じ。パンやパンケーキに塗ったり、料理に加えたり、幅広くご利用になれます。特有の芳香を生かしたレシピも数多く出回っていますが、発酵バターをパンやお菓子作りに使う際は、レシピの塩分量に注意してご利用ください。